中学の同級生からmixiでメッセージがきた。

Iからmixiでメッセージがきた。中学の同級生だ。
思えばIとは確か、三年間ずっと同じクラスだった。
背はクラスで一番低くて体は丸っこく、明るくて素朴で繊細なところがあって、何よりいい奴だった。中学に入ったあたりで授業中、正負の計算で数学の先生にわいわい質問して、理解できなくて、『なんか思ってたのと違う』と、納得いかなげな顔をして落ち込んでいたのを覚えている。
一年もするとIは立派な不良になっていた。髪を金色にして、ワルさしてるグループとつるみ、段々学校には来なくなった。よくある話で、普通に学校にいればそんなにやさぐれているというわけでもなく、先生方とも気さくに話して、面白いことには興味を示す心を持っていて、僕はどちらかというとそんな彼と仲良くしていたので、帰りのHRで先生を無視して何人かで後ろの方で椅子を集めて漫画の話なんかしたのを覚えている。ぶっちゃけ優等生がそういうことをしているのは先生にとっては色々とすごく厄介だったようで、今では申し訳なくも思う。

中学3年生の、部活も引退して適当に遊んでいた頃、部活の同級生と一つ下の後輩を交えて、公園で花火をしていたところにIがたまたまもう一人陽気な友達(彼ももちろん不良の一味ではあった)を連れて現れた。ダイジェストで話をすると、彼は僕の部の友達によくわからない理由で詰め寄り、かぶっていたキャップを片手で弾き飛ばしたあとに逆の手で左目の近くをぶん殴った。横で見ていた僕には何がなんだかよくわからなかったし、予想外に躊躇いがなく、止める隙もなかった。なんというか、あぁこれが場数か、と思った。
もう一人の方はやめとけよと言いながら笑い、二人は去っていった。僕は続けて花火を楽しむよう全員に話し、殴られた友達を家まで送り届けた。友達は自転車はこげたものの片目が大きく腫れ、病院に行くのは必須で、とても落ち込んでいた。家に着いて事情を説明すると、友達のお母さんは慌てふためいていた。
公園に戻ると仲間は花火を終えて、後輩の女の子を中心にIの悪口を言っていた。僕はIにものすごく怒っていたし戸惑っていたけれど、彼らの悪口を心の中ではよく思っていなかった。少なくとも体型を揶揄することが当たり前のタイミングであるとは思わなかったし、Iは不当に貶められていると思った。
それはただそれだけの、エピソードでしかない。

彼はmixiで僕の存在に気付き、メッセージを送ってきて、何通かのやりとりをしている。
『覚えとる??』『返事遅れてごめん!』『鈴鹿におるよ〜!』『カキピーは?』『何の仕事しとんの?』『今流行りのIT企業ってヤツ!?』『カキピー凄ぇなぁ!』『俺なんか頭悪いから・・・』『東京は良い所?』『歌舞伎町は行ったことある?』『どんな所なん?』
あぁ、こんなヤツだったな。と思った。
はっきり言って僕はこういうヤツが大好きだ。僕は、素直なヤツと話がしたい。

ただ話していて一つだけ、気がかりがある。
「僕の言葉は彼に届くだろうか?」

東京にある色んな楽しいこと、疲れること、歌舞伎町の人々のこと、道端の汚さ、朝の風景。場合によっては大学や数学の話にだって少しは触れることになるかもしれない。彼には僕の言葉から何か想像できるだろうか?
長い文章は不適切か?どういう言葉を使えば、僕のしている仕事のことがわかる?もし対面だったら、逆に何も話せなくなる?でもこれが僕じゃなく、もっと真っ直ぐに語れる人間なら、伝えることができる?彼らなら、どうやって語る?

僕は少し不安になった。色んなことを選択してきたし、その分色んな大事なことを犠牲にしてきた。こう見えても僕はたくさん変わってきた。それでも大事なことはあって、執着は捨てながらも、何かは心に残していきたいと思っている。
遠くに住んでいて関係も無い僕に、無垢な好奇心を向けてくれる彼に何も伝えられなかったら、僕はやはり、本当に大事なことから乖離していることになりはしないだろうか?

思い悩むことも減った。わざわざシリアスに何かを言ったり書いたりする必要だって無くなって、考えることにばかり真剣でクソ面倒な人間だけれど、これでも少しだけ昔よりスマートになった。だから、こういうことを書くのはなんだかかっこ悪い気もしている。それでもやっぱり、こんな風に思う。

僕は色んなものを見てきて、みんなにばらまきたい。新しいことを知ってそこから人に何かを理解してもらう役目を果たせなかったら、偉そうに自分のフィールドに閉じこもって何かを知っている気にだけなったら、僕にはやっぱり存在価値なんて何もないと思う。

理解が進むことも、知的好奇心が満たされることも、僕は正義だと信じている。だから僕は、大いに語りたい。もっと言葉を磨きたいと思う。

そんな、ごく個人的な心情とか、生きる指標の話でした。長文にお付き合い頂いた方、ありがとうございます。少しずつだけど更新するので、また目を通していただけると幸いです。

しかしカキピーなんてあだ名、よく覚えてたなあいつ・・・w